こうげい技術解説 6
こ び き
粉 引
粉引とは?
「粉引」について〜陶工房・伯耆

(銀彩ウロコ紋珈琲碗皿 陶工房・伯耆)

素地に白泥(泥状の磁土)を化粧掛け(白化粧とも言う)して素焼きし、さらに透明釉を掛けて焼成したものです。粉を引いたように、白く柔らかく清らかで美しい釉面をしているところから、茶人によって名付けられたました。粉引の素地には鉄分を含んだ赤土(茶色の土)が使われます。色合いは、素地や焼成によって白から生成、黄色味をおびたものなど微妙な違いがあります。
粉引の歴史
粉引は、李朝朝鮮の陶磁の歴史の流れを汲む技法の一つです。
12〜13世紀頃、当時の朝鮮半島の王朝であった高麗のもとで高麗青磁と呼ばれる精巧で美しいやきものが完成していました。この高麗が衰退した後、李朝が高麗の青磁窯を引き継ぎ、「粉粧灰青沙器(粉青沙器)」と呼ばれるやきものが作られるようになりました。「粉粧灰青沙器」は、白化粧をして淡青灰色の透明釉をかけたもので、当初は、高麗青磁の姿に似せたものでした。しかし、その後、李朝独特の意匠に変化していき、さまざまな技法によって多彩な李朝陶磁が生まれました。以下に主な技法を紹介します。
  • 粉引(こびき:白泥を全体に厚めにかける)
  • 象嵌(ぞうがん:素地に文様を彫り白土を埋め込む)
  • 印花(いんか:素地に文様を型押しして象嵌するもの)
  • 線刻(せんこく:全体に白泥をかけてから文様を削り取る)
  • 掻落(かきおとし:全体に白泥をかけてから、文様以外の部分を削り取る)
  • 鉄絵(てつえ:白泥を掛けた後に鉄で絵付けする)
  • 刷毛目(はけめ:白泥を刷毛で塗り、刷毛目を残す)
  • 三島手(みしまで:象眼や印花、掻落を施した物を日本では特に三島手と呼ぶ)
(左:三島手 中:粉引に絵付したもの(呉須、赤絵、鉄絵) 右:線刻)
*写真はすべて陶工房・伯耆から提供していただきました。

朝鮮のやきものは、千利休ら茶人が高麗茶碗に美を見出したことから非常に大切にされました。また大正期には、日本が朝鮮を侵略するという緊張した状況の中で、柳宗悦らが李朝陶磁を積極的に紹介し日本人に李朝文化の存在を認識させる運動を行いました。現代でも、李朝の工芸や室内調度の美は、茶の湯の世界だけでなく、日本のインテリアや工芸に影響を与え、広く親しまれています。

【参考】太陽 特集・李朝を愉しむ(平凡社)、陶器講座9・朝鮮II・李朝(雄山閣出版(株))

陶工房・伯耆